08 火事から村人を守った観音様 – 福岡市西区市民センター

08 火事から村人を守った観音様

2022年7月28日

九州大学の伊都キャンパスが位置する西区桑原。この桑原中組の中央にある、「慈雲庵(じうんあん)」と呼ばれていたお堂には、観音様が祠られています。そして、このお堂の観音様は、地域で語り継がれてきたある民話から「火除けの観音様」と呼ばれています。

今から数百年も前のこと、桑原中組の奥の方にある家で火事があった。真夜中のことであって、火事だ!と叫ぶ声に、近くの人が飛び出してみると、火の手が上がって赤くなっている。それから大騒ぎになり、近所の人も集まってきてやっと消し止め、幸い大事に至らずに済んだ。その後も何度かそのような怪火があったが、その都度発見が早く、どれも大火事にならずに済んだ。のちに、話の口を合わせていると、皆が、火事だ!という声に起こされて飛び出してきたということで、最初に火事だ!と言ったものがいない。誰が発見して叫んでまわったのだろう、不思議なこともあるものだと、その度毎に噂は残っていった。

その後、何十年も後のことである。夜中に火事だ!という声にびっくりして飛び出してみると、近くの納屋の灰捨場から燃え出している。井戸水や肥溜の水やらでなんとか消し止めることができ、納屋の一部を焼いたくらいで済んだ。前のことがあるので誰が最初に見つけたかを調べてみるが、最初に騒ぎ出したものがちっともわからない。いよいよ皆が不思議に思っているうちに、ある人がどうも観音様の方から声が聞こえたような気がすると言うので、それでは観音様が知らせてくださったのではなかろうかということになり、2、3人の者が恐る恐る観音堂に行ってみた。すると、閉まっているはずのお堂の戸が半ば開いており、中を覗いてみると、足跡らしい土の跡もある。これはいよいよ観音様に違いないということになり、誰が言うこともなく、それから「火除けの観音様」ということになったそうな。

民話「火除け観音様」:西区歴史よかとこ案内人ガイドブックより

西区歴史よかとこ案内人

https://nisiyokatoko.exblog.jp/